JSPFADの活動の成果のご報告
論文発表のご報告
2010年5月15日の毎日新聞にJSPFADの研究論文の記事が掲載されました。この記事は、2010年5月6日に米国血液学会雑誌「Blood」に掲載受理された論文に関するものです。この研究論文では、2002年より現在まで、定期的にJSPFADにご協力いただいている全国のHTLV-1感染者のデータを解析し、JSPFADプロジェクトの主要な目的のひとつである「キャリアからATLへの発症に関係するリスクファクター(危険因子)」をあきらかにしました。この研究は、HTLV-1感染者の皆様の定期的なご協力がなければ成しえなかったものです。プロジェクト関係者一同、皆様に感謝申し上げます。
論文は英文の医学論文で、かつ専門的な複雑な統計解析をしているため、最も結果をお伝えしなければならないHTLV-1感染者にとっては、内容がわかりにくくなっていると思われますので、下記のように日本文で、簡単にわかりやすい解説を作成いたしました。
これまで、HTLV-1キャリアにとって、どのようなファクター(因子)がATL進展に関係しているのかよくわかっていませんでした。 そこで、2002年から2008年の間にJSPFADに登録された1218人のHTLV-1キャリア (426人の男性と792人の女性)の登録時のHTLV-1感染細胞率(*HPのHTLV-1質問箱参照)や家族歴・病歴などを分析し、さらに、定期的な追跡調査中にATLに進展した14人について、分析した因子がどのように関連しているのかを詳細に調べました。
その結果、登録時のキャリアの方の感染細胞率はゼロから高い人で55%と非常に幅広く、中央値は1.6%でした。そのため、キャリアの人を約300人ずつ、感染細胞率に応じて4つのグループに分けて検討しました。ATLに進展した14人の感染細胞率は4.17%から28.58%と、キャリア集団のなかでも高いグループに属していました。
また、分析した因子のなかで、少なくとも下記の3つがATL進展のリスクファクターであることがわかりました。
1) 感染細胞率が4%以上(リンパ球100個の中に4個以上の感染細胞がいる事に相当)
2) 家族にATL発症者がいる
3) 年齢が40歳以上
これらリスクファクターをもっているキャリアの方は定期的な検診が望まれますが、これらのリスクファクターをもっているからといって、必ずしもATLに進展するわけではありません。これらの因子をもっているキャリアの方でも多くはATLに進展せずキャリアのままです。また、家族にHAMの発症者がいるキャリアの方の感染細胞率も高い傾向にあるのですが、ATL進展者はいませんでした。
観察期間が短かったため、とらえることができなかった他の因子や、調査していない未知の因子も関与している可能性もあります。少なくとも、現段階では、登録時のHTLV-1感染細胞率が4%以下からは、誰もATLに進展していない、ということが言えます。
今後期待されることは、リスクファクターをもっているキャリアの方に対して、ATL進展をどのように予防するかの対策でしょう。現段階では、ATLが発症した時に使用できる薬はありますが、キャリアの段階の方に対し、安全に使用でき、感染細胞率を確実に低下させATLの発症を押さえる効果がある「薬」はありません。一方で、緑茶ポリフェノールやニンニク成分のアリシンなどが感染細胞率を減量させる可能性がある、という報告もあります。今後の研究が期待されます。
文責JSPFAD 2010年5月

